部位別疾患および対処方法
- 膝
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半月板損傷
【病態】
半月板とは、膝の上下の骨の間にあり、内側と外側に一対の三日月状の形をした軟骨組織で、主として膝関節にかかる衝撃に対するクッションの働きをしています。膝関節に体重がかかった状態で捻りの力がかかると半月板に断裂が生じます。年齢によるものや繰り返し膝にストレスがかかることで断裂を生じることもあります。また、元々半月版の形状に異常がある場合(円板状半月)は断裂しやすくなります。【症状】
膝の痛みがもっとも多い症状です。膝関節を伸ばしたり曲げたりした時に損傷した部分に一致した痛みを生じることが多いです。断裂の状態によっては、痛み以外に膝がずれる感じや引っ掛かり感を覚えることもあります。完全に断裂した半月板が正常な位置からずれて上下の骨の間に引っかかってしまうと膝が伸びなくなることがあります(半月板のロッキング症状)。【検査】
MRIでほとんどの半月板損傷は診断することができますが、外側の半月板はMRIでもわかりにくい場合もあります。【治療】
半月板に損傷が生じても引っ掛かり感などの機械的な症状がなく、軟骨としてのクッション機能が保たれている場合は、リハビリテーションによる保存的治療を行います。断裂により半月板が不安定になることで、膝がずれる感じや強い痛みが生じた場合は、関節鏡手術が必要になります.手術は、半月板の機能を温存するためにできるだけ縫合術を行いますが、縫合による治癒が望めない場合は、必要最小限の部分切除術を実施することもあります。
前十字靱帯損傷
前十字靱帯(ACL)損傷は、膝が内に入ることで生じることが多いケガで、この靭帯の機能低下は、多くの場合スポーツを継続する上で致命的となります。
【病態】
ケガをした時には、関節が外れたような感覚とともに膝の中でバキッという音が鳴り、痛みが出現します。その後徐々に関節の中に血がたまってきて、翌日には関節が腫れ上がって曲げ伸ばしがしにくくなることがありますが、これらの症状は1ヶ月ほどで改善して、日常生活には支障が無くなることが多いです。ただし、治ったと思ってスポーツをすると、再度同じような症状が起こります(再受傷)。これが何度も繰り返されると膝関節の軟骨や半月板が傷んできてしまいます。【治療】
前十字靭帯が自然に治癒することは極めて稀で、断裂した靭帯を縫い合わせても十分な強度は得られないために、通常は靭帯を他の組織(移植腱)を用いて作りなおす再建術が治療として選択されています。
主にハムストリング腱と骨片付き膝蓋腱(お皿の下の腱を骨とともに採取する)を靭帯再建のための移植腱として使っています。
手術では、可能な限り正常の靭帯機能を再現するために解剖学的な再建術(ハムストリング腱を用いた解剖学的2重束再建術や膝蓋腱を用いた解剖学的再建術)を行っています。【術後リハビリ】
入院期間は通常10日前後です。術後に膝が伸びにくくなってしまうと復帰が遅くなりますので、この期間にしっかりとリハビリを行い、膝を完全に延ばす訓練をします。
手術直後から膝の屈伸や歩行を許可している施設もありますが、移植腱が骨と癒合して安定化するのには少なくとも1-2週間の固定が必要であることは過去の研究で証明されています。したがって、当院では手術後長期にわたって安定した靭帯を再建するために、術後一定期間膝関節を固定し、その後に徐々に膝を曲げ始めるプログラムとしています。
退院後のリハビリテーションでは、正常な膝関節の屈曲可動域を獲得することと筋力を回復させることが当面の目標になります。
術後3ヶ月経過し、膝関節周囲の筋力や関節の動きが改善しておれば、ジョギングを開始します。その後は、ジャンプ着地やストップ動作などが安定して行えるまで繰り返しトレーニングを行い、課題が解消すればスポーツ復帰となります。
以前は、術後6か月での復帰を目標にしていましたが、世界的に早期の移植腱の再断裂が問題となっているため、現在は術後8-9か月での復帰を目標にしています。
大腿部筋損傷(大腿四頭筋損傷、大腿二頭筋損傷)
【病態】
大腿四頭筋は膝を伸ばす時に働く一番大きく強力な筋肉で大腿の前面に位置しています。大腿二頭筋とは膝を曲げる時に使う筋肉で大腿の後面にあり骨盤の坐骨結節から膝の下についています。これらの筋肉に強力で急激な牽引力がかかること(肉離れ)や強い打撲を受けること(筋挫傷)で筋の断裂が起こります。【症状】
太もも前面や後面が痛くなり、歩行・ダッシュ、ストレッチで痛みが強くなります。また損傷部分が腫れたり内出血を生じることもあり、ひどい場合は筋の断裂により損傷部分が陥没しているのがわかることもあります。【治療】
受傷直後には、まずRICE処置(安静・冷却・圧迫・拳上)を徹底的に行うことが重要となります。大きな血の塊がある場合は、注射器でこれを抜くこともあります。
リハビリで損傷した筋肉の伸張性を回復し柔軟性を高めることで、筋が瘢痕化して固くなることを防止します。
ストレッチ痛が無くなり筋力が回復すれば復帰となりますが、再発することが多いために治癒後もケアを行っていくことが大切になります。
- 肩
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反復性肩関節脱臼(はんぷくせいかたかんせつだっきゅう)
【病態】
肩関節脱臼に対して、整復をして一定期間の三角巾固定による治療を行っても、その後に再度脱臼(再脱臼)をすることがよくあります。これは、初めて脱臼した際に肩関節の中の靭帯のうち手を上げた状態で脱臼を防ぐ靭帯(下関節上腕靭帯)が関節の土手(関節唇)と共に剥がれ(Bankart病変)、これが治癒しないために脱臼を繰り返すと考えられています。若い人に多く生じるケガで特に男性に多く、ラグビーやアメリカンフットボール等のコンタクトスポーツではその頻度が高いと言われています。20歳以下では再脱臼する率は90%前後、40歳未満で50%程度と言われていますが、再脱臼の回数が増えると不安定感は増す傾向にあります。【検査】
診断は受傷時の問診や診察での肩関節不安定感のチェック、レントゲンやMRIなどの画像診断を用いて行います。また脱臼に伴って骨折を伴っている場合は、3次元CTでもチェックします。【治療】
再発を繰り返す場合は手術をお勧めしますが、個々の状況に応じて手術までの期間にリハビリをして脱臼しにくいような動作を指導します。
手術は原則として関節鏡を用いて実施します。損傷した関節唇と下関節上腕靭帯を肩甲骨に打ち込んだアンカーを用いて修復します(Bankart法)。通常スポーツ復帰まで最低6ヶ月は必要になりますが、コンタクトスポーツや関節窩の骨折を伴う場合は、術後の再脱臼率が高いため、肩甲骨に骨移植を追加して行うことがあります(Latarjet法)。
関節唇損傷(かんせつしんそんしょう)
【病態】
代表的なものとして上方の関節唇が損傷する上方関節唇損傷(SLAP lesion)があります。 症状としては、投球動作やバレーボールでのスパイク時に痛みや引っ掛かり感、関節がずれるような感じなどがあります。日常生活では問題ありませんがオーバースロー動作で疼痛を生じます。
上腕骨の受け皿である肩甲骨の関節窩の上方にある関節唇(関節の土手)には、肘を曲げる筋肉である上腕二頭筋の腱の一つが付いています。この腱が投球動作の繰り返しで損傷することがあります。【検査】
診断は、徒手検査による各種テストやMRIで行いますが、関節鏡で確認して初めてわかる場合もあります。【治療】
治療方法として、まずリハビリにて肩関節周囲のストレッチを指導して損傷部位に負担がかからないような動作を習得し、関節の安定性を得るための筋力訓練を行います。また、関節内の炎症が強い場合は、ステロイド剤の関節内注射を行うことがあります。
これらの治療で効果が無ければ、関節鏡を用いて損傷の状態に応じた治療(切除や縫合)を行います。
リトルリーガーズショルダー(上腕骨骨端線離開)
【病態】
成長期の骨には、骨の端に「骨端線(成長線)」という成長をしていく部分があります。骨端線損傷とはその部分に損傷をきたすことをいいます。
成長期に投球動作などのフォロースルーで上腕骨の骨端線に引っ張る力と捻りの力が繰り返しかかり生じます。【治療】
日常生活では強い引っ張る力や捻りの力がかかる動作はほとんどありませんので、肩を使う運動を中止して損傷した骨端線の治癒を待ちます。
正しくない投球フォーム、過度の投球、身体が硬いことなどが原因で発症します。投球を中止している間に再発を防止するためのリハビリテーションを行います。
- 足
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足関節捻挫(足関節外側靭帯損傷)
【病態】
すべてのスポーツ障害で最も多く起こります。
足底が内側を向く形を強制されて外側の靭帯が損傷されます。損傷の程度には段階がありますが、重度の捻挫が放置され適切な治療が行われないと、靭帯の不安定性を残すことで捻挫を頻回に繰り返すようになります(構造的不安定症)。また、関節の可動域制限や筋力低下が残った場合は、運動時の痛みや不安感によりスポーツ活動に支障をきたすようになります(機能的不安定症)。重要なことは、初期に適切な治療(RICE治療)を行い、靭帯損傷に伴う出血や炎症を最小限に抑えて、早期から適切なリハビリテーションを行うことで捻挫の再発を予防することです。【保存的治療】
足関節外側靭帯損傷には自然治癒能力があるため、当院ではほとんど手術をせず治療をしています。ただし、脱臼に近いような重度捻挫の場合を除いて、ギプス固定を行うと関節が硬くなりスポーツ復帰に長期間かかるため、原則的に強固な固定は行わないようにしています。初期には腫れの軽減や安静を保つため、松葉杖を処方し、くるぶしに合わせたパッドを用いてテーピングで固定をした上で、患肢を挙上して氷による冷却を徹底的に行い(RICE治療)、その後はリハビリで足の機能の回復を図ります。また、不安定性が強い時はその後一時的にサポーターを処方することがあります。これらの初期治療を行っても痛みや腫れが続くような場合は軟骨損傷を合併している可能性があるためMRI等による詳しい検査が必要になります。一方、成長期の子供の捻挫では骨折を伴うことがほとんどのためレントゲン撮影で確認した上しっかりとギプス固定を行います。【手術的治療】
受傷後に適切な保存的治療が行われず、靭帯断裂による慢性的な不安定性が強く残った場合は、手術で靭帯を再建する必要があります。再建する靭帯は膝のハムストリング腱を使用して行い、術後は3週間程度のギプス固定をします。スポーツ復帰はリハビリテーションによる筋力や関節可動域の回復と神経筋協調性の再獲得を待って3か月後より徐々に開始します。成長線がある場合は残念ながら骨はくっつきにくいため、この外脛骨を取り除く手術をします。
有痛性外脛骨(ゆうつうせいがいけいこつ)
【病態】
外脛骨とは舟状骨(しゅうじょうこつ)という足の骨の内側にある余分な骨の一つで、これには足の裏を内側に向ける筋肉(後脛骨筋)が付着しています。この筋肉には土踏まずを引き上げる役割もあります。外脛骨自体は10%前後の人にあり、症状がなければやや扁平足になるくらいで特に問題にはなりません。 しかし、捻挫を契機に後脛骨筋が外脛骨を強く引っ張ると、舟状骨と外脛骨の間で僅かな動きが生じて痛みが出現します。こうなると"有痛性"外脛骨という状態になり治療が必要になります。後脛骨筋が緊張すると痛みを生じるため、痛みを生じないように後脛骨筋を緩めて歩くようになり、その結果土踏まずのアーチが下がり扁平足が悪化します。アーチが下がることで、逆に後脛骨筋が緊張するために、さらに痛みが生じという悪循環に陥ります。これに対して、土踏まずのアーチを持ち上げるインソール(足底板)やテーピングを使用するとともに、ストレッチや筋力の訓練などのリハビリを行うことで、歩行やランニングでの足の接地の時にアーチにかかる負担を軽減する治療を行います。このような治療の効果がなく長期間痛みが持続する場合は手術が必要になることもあります。成長期では外脛骨と舟状骨が癒合する可能性があるために、骨癒合を期待して手術で骨の間を刺激する治療を行います。 成長線が閉じている場合は、残念ながら骨癒合は期待しにくいので、通常外脛骨を取り除いて後脛骨筋を舟状骨に再付着する手術を行います。
- 肘
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離断性骨軟骨炎(りだんせいこつなんこつえん)
【病態】
離断性骨軟骨炎は、成長期の関節に繰り返して力が加わることで、関節軟骨の下にある骨に疲労骨折が起こり、悪化すると骨と軟骨が外れて関節内に落ちる(関節ねずみ)病態です。肘関節では成長期の野球少年、特に投手や捕手の肘に起きやすく、投球により肘に無理な力が繰り返えしてかかることが原因です。多くの発症年齢は10~13歳ですが、知らず知らずに病態が進行して、高校生になって初めて発見されることもあります。【症状】
投球時の痛みや肘がまっすぐ伸びなくなるなどの症状があり、骨が外れて関節ねずみになると日常生活でも肘の痛みと腫れがあり、骨が関節の中で引っ掛かると関節の動きが悪くなることがあります。【診断】
通常レントゲンでわかりますが、MRIで病変の進行度を診断して治療法を決定します。【治療法】
成長期の間は、投球禁止など局所の安静で治癒することが多いのですが、時に1年ほど要することもあります。成長期を過ぎていてMRIで骨の不安定性がある場合は手術が必要になります。
野球肘
【病態】
投球による肘関節障害の総称です。多くは投球時の肘への外反ストレスが原因となって発症します。内上顆剥離骨折や内側側副靭帯損傷、離断性骨軟骨炎等が代表的な障害となります。【治療法】
投球を禁止することにより疼痛が改善しますが、投球時の肘への外反ストレスを改善しなければ容易に再発します。再発予防には、正しい投球のフォームの獲得や全身の柔軟性を改善することが必要となりますので、トレーナーや理学療法士が果たす役割が特に重要となってきます。
- 手
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舟状骨骨折(しゅうじょうこつこっせつ)
転倒などで手のひらをついて起こり、親指付け根の腫れや痛みが出現します。レントゲン撮影でわかることもありますが、ズレが小さいとレントゲンで診断がつかず、後々になって骨折がわかることもしばしばあります。受傷状況や診察所見より舟状骨骨折が疑われるものの、レントゲン撮影で判明しない時は、確定診断のためにCTやMRI検査を追加することがあります。症状骨は、周りがほとんど軟骨で覆われているために、骨折が骨癒合しにくいことが分かっています。したがって、ギプス固定による保存的治療では、スポーツ復帰に長期間(3か月以上)かかるため、早期復帰のためには骨折部をスクリューで固定する手術治療を選択することも多いです。
槌指 —つちゆび—(マレットフィンガー)
手先にボールなどが当たって受傷するいわゆる突き指ですが、指先が自分では完全に伸びなくなった病態です。指を伸ばす腱が断裂しているか、腱が付いている骨が剥離骨折をしているかのいずれかなので、まず、レントゲンで骨折が無いか確認します。腱が断裂している場合には指を伸展位で固定する装具を1ヶ月半ほど常時装着する保存的治療を行います。骨折をしている場合は関節内骨折なので、癒合に時間がかかることと容易に骨がずれるために、ハリガネを用いて固定する手術治療を選択します。
母指MP関節尺側側副靱帯損傷
転倒や接触プレーにて母指が外に曲げられて受傷します。母指MP関節小指側に痛みが出現します。特に示指(じし/人差し指)とのつまみ動作での疼痛や力が入りにくいという症状が出現します。指にストレスをかけながらレントゲンを撮影し不安定性をチェックします。不安定性が強い場合は靭帯が自然に治癒することがないといわれているため、手術で靭帯を修復します。術後はしばらくギプス固定を行い、スポーツ復帰には手術後3ヶ月ほどかかります。
有鉤骨骨折(ゆうこうこつこっせつ)
手の付け根(母指球の小指側)を、バットやラケット、クラブのグリップエンドで強く打撲することや、繰り返しの刺激により疲労骨折をすることで起こります。多くは骨折部に痛みを生じますが、手の甲側や手関節の小指側に痛みが出現することもあります。特殊なレントゲン撮影やCTで骨折の確定診断を行います。骨折している部分が細いため骨癒合し難く、癒合後に再度骨折することがあるため、多くの場合で骨折した部分を切除する手術を選択します。手術後1ヶ月程度で復帰が可能となります。
- 脊椎
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腰椎分離症(せきついぶんりしょう)
【病態】
成長期のスポーツ選手に比較的高い頻度で起こる腰の疲労骨折です。体の柔軟性が低下した状態で、身体を後ろにそらして腰を捻る動作を頻繁に行うことで、腰椎後方に負担がかかり生じると考えられています。【症状】
腰を反らすことで腰痛が強くなるのが特徴で、疲労骨折発症当初は日常生活でも痛みが生じることがあります。ほとんどが思春期に発生して、無症状のうちに経過していることもあるといわれています。また、「分離症」があっても必ずしも「腰痛」などの症状がない方も多くおられます。【診断】
進行した例では、斜めから撮影したレントゲンで疲労骨折部分が分離していることが確認できますが、初期にはレントゲンではわからないことがほとんどです。早期発見と早期治療により骨癒合が望めますので、診察上疑わしい場合にはMRIを撮影し早期発見に努めています。【治療】
コルセット固定とリハビリテーションによる保存的治療が基本です。種々の検査で既に骨癒合が望めない状態と判断した場合は、1-2週間スポーツ活動を中止して腰痛の消失を図りながら、リハビリテーションでスポーツ復帰を図ります。疼痛が強い場合は痛み止めの飲み薬や注射を併用することがあります。初期の場合は、成長期ならば癒合する可能性が残されているため、コルセット固定と安静により骨癒合を目指します。若年者に分離が残った場合は、その部分で腰の骨が前にズレてくる危険があるため注意が必要です(腰椎すべり症)。通常3~6ヶ月間の硬性コルセットの装着とスポーツ完全休止が必要になりますが、一般に癒合の可能性は60%といわれています(分離の部位と病期によって違います)。コルセット固定とスポーツ休止の期間に、復帰後の再発予防を目的に、疲労骨折の原因となった柔軟性の低下を改善して体幹の筋力強化を図るリハビリテーションを行うことが重要になります。
競技別疾患および対処方法
- アメリカンフットボール/ラグビー
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(1)脊髄・脊椎
・重篤な頚髄損傷は、頭を下げたタックルやヒットによって生じます。予防のためには、正しい姿勢を取得することが重要です。
・ヒットする際に頸椎が左右に曲がるのと同時に同側の肩が引き下げられた時に、神経根(または腕神経叢)の一過性の障害を来すバーナー症候群が発生します。多くの場合、安静によ保存的治療で2週間以内に軽減します。
・腰痛症や腰椎椎間板ヘルニアはあらゆるスポーツで発生する可能性があります。
・腰椎分離症は学童の発生率が高い疲労骨折の一種で、早期診断による治療開始が重要です。
(2)肩関節・上肢
・肩関節脱臼はタックル時の受傷が多いです。コンタクトスポーツでは再発の頻度が高いので、多くの場合、手術が必要になります。
・肩鎖関節捻挫と鎖骨骨折は、転倒して地面と衝突することで発生します。転位のある鎖骨骨折に対しては骨接合手術が行われます。
(3)肘関節
・肘を伸ばして手をついて起こる後方脱臼が多く、転倒により生じます。多くの場合、骨折がなければ保存的治療で対応可能です。
(4)手・指
・舟状骨骨折は転倒や落下時に手首を反らして手をついた場合に生じます。見逃されやすいので注意が必要です。多くの場合、手術治療を選択します。
(5)骨盤・股関節
・大腿四頭筋挫傷は打撲で生じます。筋肉内の出血によって異所性骨化を生ずることがありますので、RICE治療を行い、残った血腫はエコーで観察しながら注射器で穿刺する治療を行います。
・重度の肉離れ(骨盤付着部でのハムストリング腱の断裂)では、手術が必要になります。
(6)膝関節
・膝靱帯損傷は、前後十字、内側側副靱帯損傷が多いです。原則的に、前十字靭帯損傷は靭帯再建術を、後十字靭帯、内側側副靭帯損傷は保存的治療を行います。
・半月板損傷は現在関節鏡下縫合術が標準的な治療法です。
(7)下腿
・シンスプリントは脛骨疲労性骨膜炎とも呼ばれる下腿の下 1/3 内側が痛む慢性障害で、疲労骨折との鑑別が困難です。原因を分析して適切な保存的治療が重要となります。
【足関節・足】
・足関節捻挫はスポーツ外傷で最も頻度が高いです。受傷直後の現場でのアイシングや圧迫による腫脹防止が重要となります。早期からの荷重と ROM 訓練により早期機能回復・復帰を目指します。
- サッカー
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(1)骨盤・股関節
・骨盤の裂離骨折はキック等をする際の筋力によって生じ、 高校生以下の成長期に生じます。
・大腿四頭筋挫傷は打撲で生じます。筋肉内の出血によって異所性骨化を生ずることがありますので、RICE治療を行い、残った血腫はエコーで観察しながら注射器で穿刺する治療を行います。
・内転筋付着部炎、恥骨結合炎などのそけい部痛症候群は股関節周辺に痛みを生じてそれぞれの原因を的確に診断して治療することが重要です。キック動作を繰り返したり、グランドを長時間動き回るスポーツでしばしば発生します。
(2)膝関節
・膝靱帯損傷は、前十字、内側側副靱帯損傷が多いです。
・半月板損傷はキック動作による外側半月板損傷が多く、原則、関節鏡下縫合術を行います。
(3)足関節・足
・フットボーラーズアンクルは足関節捻挫など度重なる外傷の結果として骨のトゲができ、これがぶつかり合うことで痛みを生じます。強い可動域制限や関節内遊離体(関節ねずみ)を生じた場合は、関節鏡手術を行うことがあります。
【ジョーンズ骨折】
第5中側骨(小趾の根本の骨)の疲労骨折で、非常に癒合しにくいため、原則手術を行います。股関節の内旋可動域が低下して、足部の外側荷重になっている選手に発生することが報告されているため、予防にはストレッチやインソール装着などが有効です。
- バスケットボール
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(1)大腿
・打撲で大腿四頭筋挫傷を生じることがあります。重症例で運動復帰が早過ぎると異所性骨化が発生することがありますので、MRIで損傷の程度を診断して、適切な治療を行う必要があります。
(2)膝関節
・膝靱帯損傷は、前十字靭帯損傷が多くみられます。特に女子選手の受傷が多く、予防に取り組む必要性があります。
・ジャンパー膝などのオーバーユースの障害が多く発生します。治療と平行して、再発予防のリハビリテーションが必要となります。
(3)下腿
・脛骨の中央前方の疲労骨折(跳躍型疲労骨折)は難治性で長期間のスポーツ離脱が必要となるため、手術を選択することがあります。MRIを撮影して早期に的確な診断を行い、治療を開始することが重要です。
・シンスプリントは脛骨疲労性骨膜炎とも呼ばれる下腿の下 1/3 内側が痛む慢性障害で、疲労骨折との鑑別が困難です。原因を分析して適切な保存的治療が重要となります。
(4)足関節
・捻挫は非常に高頻度に生じます。ほとんどの方が復帰可能となりますが、10-20%の方が靭帯の緩みが残ったり軟骨損傷を伴うことがあります。復帰後捻挫を繰り返すことも多く再発予防のリハビリをする必要があります。
- 陸上競技
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(1)大腿
・スプリンターでは大腿後面の筋(ハムストリング)の肉離れが高率に発生します。MRIで損傷部位と程度を診断して、タイプ分類を行い、適切な安静期間(1週間~3カ月)を設定してリハビリテーションを実施することが重要です。
(2)膝関節
・長距離選手ではランナー膝と呼ばれる外側の炎症(腸脛靭帯炎)が高率に発生します。筋力のアンバランスを解消するためのリハビリテーションと、ランニングシューズや練習環境への考慮が重要です。
・膝の皿(膝蓋骨)周辺のオーバーユースの障害が多く発生します。治療と平行して、再発予防のリハビリテーションとランニングフォームの分析と指導が必要となります。
(3)下腿
・跳躍選手に起こる脛骨の中央前方の疲労骨折(跳躍型疲労骨折)は難治性で長期間のスポーツ離脱が必要となるため、手術を選択することがあります。MRIを撮影して早期に的確な診断を行い、治療を開始することが重要です。
・シンスプリントは脛骨疲労性骨膜炎とも呼ばれる下腿の下 1/3 内側が痛む慢性障害で、疲労骨折との鑑別が困難です。原因を分析して適切な保存的治療が重要となります。長距離選手に対しては、インソール作製が有効なことがあります。
(4)足関節・足
・長距離選手では足部の骨に疲労骨折を起こすことがあります。舟状骨などの難治性の骨折では、手術治療が必要になることがあります。 ・最近話題の接地位置の変更に伴う足部の痛みに対しては、ランニングフォームの分析に基づく適切なトレーニング指導が有効です。