がんの集学的治療

消化管（胃腸）

食道・胃・大腸のがんのいずれのも、ごく早期のものでは消化管内視鏡による粘膜下層剥離術（ESD）、準早期のものでは外科手術単独で治療を行いますが、進行したがんではそれぞれで異なる集学的治療を行います。

• 進行食道がんは、比較的副作用の少ない抗がん剤と放射線治療、外科手術を組み合わせて治療を行います。
• 進行胃がんは、点滴や内服による抗がん剤と手術を組みあせて治療を行います。
• 進行大腸がんは、内服、点滴、持続注入ポンプを用いた抗がん剤治療を行い、手術により切除できる（ようになった）場合は、積極的に手術を行います。
• 大腸がんの中でも直腸がんに対しては、放射線治療も併用します。大腸がんの場合、肝臓や肺に転移しても抗がん剤と組み合わせることで切除できることが多いので転移しているにもかかわらず完治が見込める場合も少なくありません。

明和病院は、大腸がん治療の専門施設であると同時に肝臓手術の専門施設でもあり、他院では切除できないと言われた肝転移でも切除できることが多々あります。
外科のみならず担当する集学的治療チームが、密に相談しつつ治療を進めていきますので、あきらめることなくご相談ください。

消化器（肝胆膵）

肝胆膵領域の悪性腫瘍（がん）は、一部の疾患を除き、外科的切除が唯一治癒を期待できる治療です。ところが発見時にはすでに切除が困難なほど進行していることも少なくなく、たとえ手術が可能であっても術後高率に再発をきたすことから、一般に治療成績が非常に悪いがんと言えます。しかし近年、新たな抗がん剤の開発や放射線治療を含めた非手術的治療の進歩、手術手技の向上などにより、高度進行がんを克服した方や、過去の常識では考えられないほど長く存命される方が増えてきています。当科では、内科、放射線科、病理部と密に連携し、診療科横断的に様々な治療手段を駆使して難治性肝胆膵悪性腫瘍の集学的治療に積極的に取り組んでいます。厳しい病状でも諦めず、個々の患者さまにベストの治療を模索しながら専門性の高い治療を行っています。同時に、積極的治療が困難となった方にも緩和的医療を提供しています。

呼吸器

肺がんの治療には、集学的治療が重要です。気管支鏡などで肺がんの確定診断をつける呼吸器内科と、縦隔鏡や胸腔鏡手術の得意な呼吸器外科とで、呼吸器センターを創設しています。現在我が国で増加の一途をたどり、日本人の死因１位となっている肺がんでは、助けるには早期の外科手術しかない状況ですので、診断をつけて手術可能ならすぐに摘除できます。また、放射線診断科・放射線治療科とも協力して診療しています。診断にはＣＴ・ＰＥＴ・ＭＲＩなどの画像診断は重要ですし、放射線治療科には定位照射や強度変調放射線治療ができる最新式の放射線治療装置があり、苦痛が少ない効果的な治療をしてもらえます。従来の化学療法に加えて、気管支鏡検査や手術で得られたがん組織や細胞から遺伝子を抽出し、変異陽性例には、最適で有効な分子標的薬を使用、また免疫療法も行います。

乳腺・内分泌

多くの転移性乳がんは治らないとされているため（2年生存率約50％、5年生存率約25%）、負担の小さな治療から開始し、治療抵抗性獲得に従って負担の大きな治療へと進めていく方法が推奨されています。ただ、近年の乳がん治療薬の進歩は目覚ましく、完全寛解(cCR)症例では5年生存率が約80%得られることが報告されました。しかし、上記の方法ではcCR率は約16%しか得られないことが分かっております。
そこで当院では、たとえ転移・再発乳がんであっても、根治を目指したい患者様にはバイオロジーに基づいた理論的な集学的治療を積極的に取り入れ、非常に高い治療効果を上げています。すなわち、すべての転移において病態にあった薬物療法に加え、脳転移にはγナイフや全脳照射を、肝転移にはラジオ波焼灼や肝切除を、リンパ節転移には放射線照射等を適切に組み合わせています。
これにより当院の転移性乳がん（2011年4月から2016年4月の治療開始27例：うち局所進行乳がん15例）における治療成績はcCR継続率63％、2年生存率100%、観察期間4-61ヶ月、中央値26ヶ月）と非常に良好な結果が得られています。
再発乳がんも同様に非常に良好な成果が得られており、今後も根治を目指した集学的治療を積極的に進めてまいります。

泌尿器

腎がんは基本的に手術療法が基本となりますが診断時に転移を有していても手術と分子標的薬の併用で治療成績が改善します。新しい分子標的薬の登場もあり、今後も予後の改善が期待できると考えます。
腎盂尿管がんや膀胱がんに関しては手術療法や化学療法および放射線治療を組み合わせる事で根治や予後の改善に繋がっています。当院では明和キャンサークリニックと協力し、集学的な治療の対応が可能です。
前立腺がんについては根治療法として手術や放射線治療がありますが、再発や転移例に対しては化学療法や放射線治療を組み合わせる事でやはり予後の改善に繋がります。当院では根治療法としての放射線治療(明和キャンサークリニック)や再発転移症例に化学療法や放射線治療(明和キャンサークリニック)の対応を行っています。